正しい色彩の商品写真へ挑戦2

簡易測色計を使った具体的な例を紹介します

この記事を書く前にも、実際の仕事で利用してみて好印象だったのですが、そのままご紹介することは憚られるので、撮影と色調整のステップをなぞるように紹介します。

下のような商品の色彩再現を重要とする商品写真です

カメラ=EOS 5Dmk4 WB=5200K ピクチャースタイル=スタンダード 照明=スタジオストロボ

上のようなシーンを想定し、4色のノートの色彩を忠実に記録しようと撮影しました。

忠実な色彩を再現するため、表面に反射を入れない、ライトはカメラ側から、等々という立体物の複写にはしたく有りませんので、普通に(普段の仕事のように)ライティングして撮影しました。

作業を順に紹介します

1)本番撮影状態でグレースケールを写し込む

グレースケールを使ってホワイトバランスの基準とする

被写体や背景の色彩が、被写体の周辺に反射し光の色は撮影毎に変化しているので、被写体にどの様な光が当たっているかを客観的に見定め、色被りをキャンセルするには、基準となるチャートが一番です

2)撮影した画像を現像する時に、グレーチャートの中間をクリックしたホワイトバランスを適用させる

この段階でも紺色の表紙ではハッキリと色が変わっています

3)忠実な色彩バランスを目標として作成した、オリジナルピクチャースタイルを適用

ブルーとグリーンの表紙ではハッキリと変化が確認出来ます。
少しコントラストが下がったので、最終的に調整を加えます。

 デフォルトの設定ではどのカメラでも被写体に忠実な表現は念頭にありません。綺麗と感じることが第一なので、少しコントラストが高く鮮やかなことが普通です。

4)ノートの表面の色を測色した数値を元に、新しいレイヤー上にパッチを作ります。

パッチが浮いたように目立ちます

5)被写体の色がパッチに近づくように調整します
 微妙な明るさと各色彩のコントロールのため、この画像では調整レイヤーで「トーンカーブ」と「色相彩度」を乗せています。

パッチが写真と少し馴染んだ印象です

最初の状態と比較してみます

よく見れば各色の印象はかなり違います。色合いだけでなく濃さも大きく影響しています。

色彩の数値コントロールの重要性は

「幾つものステップを費やした作業の割に効果が薄い」とか、「カメラが進化すれば解決する」とかのご意見もあると思いますが、カメラが色彩を正しく記録するメカに進化することは絶対に無いと思います。なぜなら、メーカーは正しい色を記録したいというユーザーを、メインの顧客とは認めていないからです。

商品カタログが紙媒体からインターネットへと加速度的に変化する中、「正しく色を観察できるディバイスが普及していないのだから、画像の色彩を緻密に調整しても意味がない」との意見も散見されますが、表示の安定性はかなり進化していると思います。多くの方が使用しているiPhoneやiPadで買い換えたときに、昔は色が変わったとハッキリ認識できましたが、現在では殆ど変わらない印象です。つまり、一定の範囲にコントロールされていると言うことです。

指標を持たずに、デザインや印刷等の各ステップで「よかれと思って」調整された紙媒体の色彩より、iPadの方がよほど安定していると感じています。だからこそ簡易的とはいえ測色し数値で色彩をコントロールすることは、最初で最後の色彩を定着させる職業として、カメラマンの必要なスキルだと確信しています。Webデザイナーが、色彩のことで心配不要となるワークフローのためには、少しだけカメラマンが頑張る必要がありそうです。

正しい色彩再現が必要とされるジャンル

前回紹介させて頂いた、測色機を使った実例を紹介します

実際に頻繁に悩むのがアート作品の撮影です。同じ青でも色合いや彩度明度がカメラによって大きく異なるのですが、原因の多くはカメラの色彩が「美しく感じる色を再現する」事だからでしょう。

作家の高原洋一氏から許諾をいただき、紹介させて頂きます

左は忠実な色再現を目指して制作したオリジナルのピクチャースタイル(Canonの仕組み)を使って撮影し、その後背景の赤色を測色し修正した結果です
右はデフォルトの「スタンダード」で撮影しています。
下はその部分アップです

一見してあまり変わらないように感じる方も多いかもしれませんが、背景の色合いも明度も全く異なります。

次は青を基調とした作品です

カメラは「綺麗な青空を再現すべき」という命題を抱えているのか、案外忠実さとは遠い色彩です。前の作品と同じ手順で制作しています。意図して加工したわけではありませんが、紺の中にある黒い線の浮き上がり方が、オリジナルの作品に近く感じられます

実際の方法としては、キーとなるカラー一色を測色値に一致させる作業を今回はおこないました

新しいレイヤーを作成し、測色した数値で色のパッチを作ります

測色はLabでD50光源でおこないました
その数値の色を写真の上のレイヤーに表示させ、下にある画像に色相彩度で変更を加えます

完全に数値だけで追い込むことは難しく、この方法が現実的な作業と考えました。

キーとなっているオリジナルピクチャースタイルは以下「オリジナルピクチャースタイル」FBで「忠実な色バランス」を検索して下さい
https://www.facebook.com/psefan
少し彩度が高すぎるかもしれませんので、ご自分で調整して下さい

最終色調整は何時誰がする?

職業的なカメラマンは、印刷が主たる出力であったときは、最終的には印刷現場で微調整は必須なので、潰れたり飛んだりしなくて、WBが合っていれば良い事が必須でしたが、インターネットによって撮影者自身が色彩に責任を持つ必要が出てきたように思えます。
正しい色彩を求められたとき、応じるスキルを重要と弊社では考えます

高原洋一先生 有り難うございました

正しい色彩の商品写真へ挑戦

我々広告に携わってきたカメラマンは、写真のイメージ的魅力と同時に、商品の色彩が正しく再現されるかどうかも求められます。

そこで、求めやすくなってきた小型の測色機を使って、正しい色再現の挑戦をしています。
今回のケースはアパレルにおける生地色の再現に挑戦します。
以下の様な4色の生地を撮影し、現物に如何に近づけるか方法を探ります。

Canon EOS 4Dmk4 デフォルトの設定で撮影

普通に撮影した結果ですが、色彩は現物とは微妙に異なっています。ブルーに見える生地は、もっとグリーンがかっており、茶色に見える生地は深い紫色です。商品の色彩を伝えるという役目は果たせていないようです。

色彩を記録する為の撮影から仕上げまで

1-撮影

カメラのホワイトバランスを「昼光」で撮影
カメラのホワイトバランスを、グレーチャーをクリックして調整

まずは、照明光とカメラをマッチさせます。

2-色彩の基本的な補正(ピクチャースタイル)

撮影したデータを現物色を忠実に再現できるよう工夫した、ピクチャースタイル(カメラの色調整システム)を使ってデータ現像時に色調整します。

オリジナルのピクチャースタイルを適用した結果

この段階ではまだ微妙に印象が異なる色彩といえます

3-生地色を測定

小型の測色機を使って生地の色を測定します

スマホでコントロール可能な小型の測色機を使って、生地の色彩を測定します。

4-測定値に合わせて色を調整

画面上に測定した数値で色のパッチを置いて比較しながら補正

現像した画像の上に測定した数値を元に、目標とする色のパッチを置いて似た色になるよう画像の色味を調整します。
完全な一致は生地を構成する糸の光沢等により無理でしたが、色合い(色相)を合わせる事で、現物に大きく近づく事が可能でした。

4-測色結果準拠とカメラ任せとの比較

現物をモニター横に並べればハッキリとした差があるのですが、基本的な色傾向は誤解ない範囲に収まっていると感じました。

アパレルの撮影ではカタログ等の印刷物に仕上げる場合には、印刷現場での色補正が当たり前なのですが、Web上でカタログを展開する場合には、こうした正しい色再現への取り組みが必須と考えます。

千差万別のユーザーの観察環境によって大きく左右される事は否めませんが、環境による色彩視認のブレを完全でなくても容易な方法で軽減できれば、こうした取り組みの有効性は計り知れないと思っています。

横着者の練習熱心1

最近あまり撮影しなくなったワインのボトルですが、ふと撮影してみたくなって、、難しそうなワインを選んで購入してきました。

撮影時間は出来るだけ短時間で、大ざっぱなセッティングでもキチンとした仕上がりを目標とし、レタッチを最小限にしたくチャレンジを開始しました。
しかし、モデル選びが甘かったようですね。あまりにも難しすぎて力不足を感じてしまいました。掲載していませんが5カット撮影して、仕上げまでの所要時間は約3時間でした。
3タイプの写真を仕上げて掲載しましたので、是非ご覧下さい。

ノーマルに撮影する事の方が格段に難しく、イメージカットは発想さえ出来ればバリエーションも含めて楽しく撮影出来ました。

今夜美味しく飲んでワインに愚痴を聞かせます

一番ノーマルな商品写真を目指しました
少しだけダイナミックな印象に仕上げました
被写界深度を浅くして撮影すると、細部のアラが見えなくてらくちんですね。

点光源で「太陽」みたいな光が欲しい

ずっと以前には点光源に近い、小さなハロゲン電球を使った照明器具もあったので、シャープな影を出したり鋭いガラス内の光を演出できましたが、ストロボに変わり発光体が大きくなり、LEDに変わってさらに大きくなるなど、面光源への対応は非常に容易になったのですが、点光源のシャープな光源が入手しにくくなっています。
クライアントからの依頼も含め長らく取り組んできたのですが、やっと現実的な価格で汎用性の高い機材が出現し、導入に至りました。

前にお知らせした、プロジェクターを使った撮影方法も1つの方法といえますが、元々の発光素子自体が撮影を意識していないため、発色面ではコントロールに苦労する機材です。しかし、プロジェクターでしかなし得ない撮影もあるので、全てが新機材に置き換わるわけではありません。

タングステン時代には「エリスポ」と呼ばれる、ライトカッターを備えた照明器具が存在しましたが、この機材も同様の効果があり、ピントの調整も可能です。
光源に窓枠のような表現となる枠(プレート)を使えば、差し込む夕日の表現も可能です。
様々な柄のプレートが用意されているので、シーンで使い分ける楽しみもあります。
現状の照明機器では難しい、氷やガラスを通過した光の演出です。太陽の下に持ち出して撮影することが最終手段ですが、被写体によっては不可能ですし天候に左右されます。この照明機材は見事に太陽の替わりを務めてくれます。

照明機器、光の質、光の色等々に精通することは、写真撮影のプロとしては追求すべきポイントの1つと考えています。今でも白熱電球、蛍光灯、ストロボ、LEDと様々に用意して、クライアントの要望に応えてゆくよう準備しています。

ジュエリー写真が素敵な動画に

 長いお付き合いを頂いている「ジュエリークラフトYAMAJI」様で、撮影させて頂いたジュエリーの写真をベースに素敵な動画を公開されています。伺えば動画編集の専門ではない若いスタッフさんの作とか。
このようにお使い頂いて撮影した本人としてはとっても幸せです。
YAMAJI様のHPも素敵ですよ。是非ご覧下さい。
https://www.j-yamaji.com/