正しい色彩再現が必要とされるジャンル

前回紹介させて頂いた、測色機を使った実例を紹介します

実際に頻繁に悩むのがアート作品の撮影です。同じ青でも色合いや彩度明度がカメラによって大きく異なるのですが、原因の多くはカメラの色彩が「美しく感じる色を再現する」事だからでしょう。

作家の高原洋一氏から許諾をいただき、紹介させて頂きます

左は忠実な色再現を目指して制作したオリジナルのピクチャースタイル(Canonの仕組み)を使って撮影し、その後背景の赤色を測色し修正した結果です
右はデフォルトの「スタンダード」で撮影しています。
下はその部分アップです

一見してあまり変わらないように感じる方も多いかもしれませんが、背景の色合いも明度も全く異なります。

次は青を基調とした作品です

カメラは「綺麗な青空を再現すべき」という命題を抱えているのか、案外忠実さとは遠い色彩です。前の作品と同じ手順で制作しています。意図して加工したわけではありませんが、紺の中にある黒い線の浮き上がり方が、オリジナルの作品に近く感じられます

実際の方法としては、キーとなるカラー一色を測色値に一致させる作業を今回はおこないました

新しいレイヤーを作成し、測色した数値で色のパッチを作ります

測色はLabでD50光源でおこないました
その数値の色を写真の上のレイヤーに表示させ、下にある画像に色相彩度で変更を加えます

完全に数値だけで追い込むことは難しく、この方法が現実的な作業と考えました。

キーとなっているオリジナルピクチャースタイルは以下「オリジナルピクチャースタイル」FBで「忠実な色バランス」を検索して下さい
https://www.facebook.com/psefan
少し彩度が高すぎるかもしれませんので、ご自分で調整して下さい

最終色調整は何時誰がする?

職業的なカメラマンは、印刷が主たる出力であったときは、最終的には印刷現場で微調整は必須なので、潰れたり飛んだりしなくて、WBが合っていれば良い事が必須でしたが、インターネットによって撮影者自身が色彩に責任を持つ必要が出てきたように思えます。
正しい色彩を求められたとき、応じるスキルを重要と弊社では考えます

高原洋一先生 有り難うございました

正しい色彩の商品写真へ挑戦

我々広告に携わってきたカメラマンは、写真のイメージ的魅力と同時に、商品の色彩が正しく再現されるかどうかも求められます。

そこで、求めやすくなってきた小型の測色機を使って、正しい色再現の挑戦をしています。
今回のケースはアパレルにおける生地色の再現に挑戦します。
以下の様な4色の生地を撮影し、現物に如何に近づけるか方法を探ります。

Canon EOS 4Dmk4 デフォルトの設定で撮影

普通に撮影した結果ですが、色彩は現物とは微妙に異なっています。ブルーに見える生地は、もっとグリーンがかっており、茶色に見える生地は深い紫色です。商品の色彩を伝えるという役目は果たせていないようです。

色彩を記録する為の撮影から仕上げまで

1-撮影

カメラのホワイトバランスを「昼光」で撮影
カメラのホワイトバランスを、グレーチャーをクリックして調整

まずは、照明光とカメラをマッチさせます。

2-色彩の基本的な補正(ピクチャースタイル)

撮影したデータを現物色を忠実に再現できるよう工夫した、ピクチャースタイル(カメラの色調整システム)を使ってデータ現像時に色調整します。

オリジナルのピクチャースタイルを適用した結果

この段階ではまだ微妙に印象が異なる色彩といえます

3-生地色を測定

小型の測色機を使って生地の色を測定します

スマホでコントロール可能な小型の測色機を使って、生地の色彩を測定します。

4-測定値に合わせて色を調整

画面上に測定した数値で色のパッチを置いて比較しながら補正

現像した画像の上に測定した数値を元に、目標とする色のパッチを置いて似た色になるよう画像の色味を調整します。
完全な一致は生地を構成する糸の光沢等により無理でしたが、色合い(色相)を合わせる事で、現物に大きく近づく事が可能でした。

4-測色結果準拠とカメラ任せとの比較

現物をモニター横に並べればハッキリとした差があるのですが、基本的な色傾向は誤解ない範囲に収まっていると感じました。

アパレルの撮影ではカタログ等の印刷物に仕上げる場合には、印刷現場での色補正が当たり前なのですが、Web上でカタログを展開する場合には、こうした正しい色再現への取り組みが必須と考えます。

千差万別のユーザーの観察環境によって大きく左右される事は否めませんが、環境による色彩視認のブレを完全でなくても容易な方法で軽減できれば、こうした取り組みの有効性は計り知れないと思っています。